Japan Medical Bridge

脳卒中のあとの生活とリハビリ — 回復の道のりを、正直に

突然の新しい変化は再発(2度目の脳卒中)のサインかも — 直ちに救急番号に連絡を(FAST)

  • F(顔) — 顔の片側がゆがんでいないか。「笑ってみて」と頼む。
  • A(腕) — 片腕に力が入らない・しびれないか。「両腕を上げて」と頼む。
  • S(言葉) — ろれつが回らない・言葉が出にくくないか。
  • T(時間) — どれか一つでも新しく起きたら、いま連絡する時間です。始まった時刻を覚えておく。

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脳卒中そのものは、もう終わりました。急性期の治療が済み、命の峠は越えた——そして今度は「リハビリ」という言葉と、多くのご家族を不安にさせるあの一言が聞こえてきます。「回復するのは、だいたい最初の6か月まで」。海外でご本人やご家族が脳卒中になった方、あるいは日本のご家族が倒れて遠くから調べている方に、最初にお伝えしたいのはこれです。最初の数か月は決定的に重要で、リハビリは濃いほど報われます。ただし一般に、6か月は道の曲がり角であって、終点ではありません。その先の改善はゆっくりで、努力も要りますが、確かにあります。いま必要なのは諦めの準備ではなく、計画です。

脳卒中からの「回復」とは何が起きているのか

脳卒中で失われた脳組織は、再生しません。それでも回復が起きるのは、別の——そしてより希望のある——仕組みが働くからです。発症後の数週間はむくみが引き、「気絶していたが生きていた」周辺の領域が目を覚まします。その後は、生き残った神経のネットワークが失われた機能を肩代わりするように、配線をつなぎ替えていきます。これが神経可塑性で、その最大の燃料は反復です。何百回の動作、何百回の発話、何百回の嚥下。だからリハビリは「安静+体操」ではありません。リハビリこそが治療です。

取り戻すべきものは人によって大きく違います。手足の麻痺、言葉(失語)、飲み込み、片側への不注意(半側空間無視)、疲れやすさ、思考や気分の変化——それぞれが別のカーブを描いて回復します。そして「回復」とは、必ずしも倒れる前とまったく同じ生活に戻ることではありません。同じ道で、あるいは新しい道で、「生きるに値する暮らし」を組み直していくことです。

回復の道のり:3つの時期と、「6か月」の意味

脳卒中後の機能回復の一般的な経過を示す模式図 左下から右上へ立ち上がる曲線。急性期と亜急性期の前半で急に上がり、その後は慢性期にかけてゆるやかに上がりつづけるが、上限には届かない。速さや到達点に個人差があることを示すため、帯で幅をもたせて描いている。横軸は3つの時期に分けた時間、縦軸は機能回復。 時間 → 機能回復 → 急性期(数日) 亜急性期 (数週〜数ヶ月) 慢性期 (6ヶ月〜)
一般的な傾向として、脳卒中後の回復は早い時期ほど大きく進み、その後はゆるやかに続きます ── 6か月でぴたりと止まるわけではありません。その速さや到達点には個人差が大きく、この図はあくまで模式的なもので、特定の方の見通しを示すものではありません。作図: Japan Medical Bridge.

回復は、一本の長い坂ではなく、3つの時期として思い描くと分かりやすくなります。これは、日本の制度の組み立て方とも重なります。

では、回復は本当に6か月で止まるのか。正直に言うと、「プラトー(頭打ち)」は半分は生物学で、半分は見かけです。カーブの急な、実り多い部分が早期にあるのは事実で、だからこそ最初の数か月の密度が大切です。「6か月」の根拠になっているのはコペンハーゲン脳卒中研究などの大規模研究で、日常生活動作の大まかな指標では多くの方が約3か月、ほぼ全員が6か月以内に最良点に達しました。ただし注意してください——大まかな指標では、です。この種の物差しは、変化が止まるずっと前に、変化を測れなくなります。歩行の持久力、麻痺した手の使用、そして特に言葉は、「点数」ではなく具体的な目標(「コップを運ぶ」「レストランで注文する」)に絞った訓練を続ければ、6か月を過ぎても、ときに何年も改善しえます。

回復に影響する要因

ご家族から、そっと「どこまで戻りますか」と問われることがあります。数字を約束できる人はいません。それでも、何が実際にカーブを動かすのかを知っておくと役に立ちます——「はじめから決まっているもの」と「これから働きかけられるもの」を分けて考えるのがコツです。

おおむね決まっているもの(配られた手札):

働きかけられるもの(努力の向かう先):

どれも「そうと決まる」ものではなく、確率を動かす要素です。その人でどう組み合わさるか、現実的にどこを目標にするかは、ご本人を診られるチームと相談するものです。

日本の特徴:リハビリを「制度」として組み込んでいる

ここが、国際的に見て日本の際立った点です。日本は2000年、脳卒中後の集中的リハビリを診療報酬制度そのものに組み込み、回復期リハビリテーション病棟という専門病棟をつくりました。一般的な枠組みはこうです。

多くの国では、脳卒中後の入院リハビリは数日〜数週間で、その先は外来通院に委ねられます。日本は「脳卒中後の数か月」をひとつの独立した医療のフェーズとみなし、専用の病棟・人員基準・算定上限として定められた期間を与えるという、構造の異なる選択をしました。どちらが正しいという話ではありません。ただ、この制度は具体的な物差しをくれます。世界のどこにいても、確かめるべき問いは同じです——1日何分の実働のリハビリを、誰が、何週間続けてくれるのか。

正直に言えば、このテーマは私事でもあります。Japan Medical Bridge の原点は、祖父の脳卒中でした。田舎町では、脳卒中の「あと」に受けられるものが、都市とは違いました。発症後の数か月が祖父の人生と家族の生活を方向づけたことが、私が脳神経外科医になった理由の大きな部分です。「リハビリの計画は手術と同じだけ真剣に」と言うとき、私は医師としてだけ話しているのではありません。

評価と、リハビリの中身

「リハビリ」はひとつのものではありません。まず評価から始まります。訓練を受けた専門職が、歩行・バランス・手の使用・言葉・飲み込み・思考・気分を、多くは標準的な尺度を使って測り、勘ではなく数字で進み具合を追えるようにします。そこから先の中身は、おおむね3種類の療法士で分担されます。

実用的な2つの手立ても挙げておきます。

生活を取り戻す:仕事・運転、そしてそれを支える制度

働く世代なら、復職は珍しいことではありません。多くは数か月かけて、時短や配置転換などの段階を踏みます。日本では「治療と仕事の両立支援」として、リハビリチームが職場向けの具体的な意見書を書く形が広がっています。運転は性質が違います。「もう大丈夫そう」という感覚で決めることではなく、視野・半側空間無視・反応・けいれん発作のリスクなどの正式な評価が前提で、法的な手続きは国ごとに違います。日本では一般に、診断書の提出や、運転免許センターでの安全運転相談・適性検査という道すじがあり、リハビリ病院によってはドライビングシミュレーターでの評価を先に行います。国境を越えて通用する原則はひとつ——勘で決めず、評価を受ける。時期はカレンダーではなく、主治医に問うてください。

生活を取り戻すのはリハビリだけではありません。その費用を支え、住まいを整える公的な制度もあります。日本では、知っておきたい制度が二つあります。

これらの制度は、正直なところ日本のご家族にとっても迷路で、病院のソーシャルワーカー(医療相談員)が案内役になってくれるのが普通です。海外から日本国内の脳卒中に向き合っているご家族にとっては、この二つの扉があると知っておくこと——そして病棟の相談員に早めに尋ねること——だけで、退院後の数か月の景色が変わりえます。

すぐに受診すべき症状

回復には、性質のまったく違う2種類の変化があり、それを見分けることが大切です。ゆっくりした変化——数週間かけて手足がつっぱる、気分が沈む、新たな疲れやすさ——は、次の外来で主治医やリハビリチームに相談することです。しかし突然の変化は、2度目の脳卒中(再発)のサインかもしれません。これは分単位を争う緊急事態です。世界共通で教えられている合言葉がFASTです。

また、突然の、これまでで最悪の激しい頭痛突然の意識障害突然の激しいめまいとバランスの崩れ突然の視力の消失も、直ちに救急です。脳卒中は、治療が早いほど救える脳が多く残ります。迷う時間があるなら、その時間で救急に連絡するほうが安全です。

主治医・リハビリチームに持ち帰るとよい質問

持ち帰りリスト
  1. いまの症状のうち、どれが最も改善を見込めますか?それぞれの具体的な計画は?
  2. 実働のマンツーマンのリハビリは1日何分実施されていますか?増やせますか?
  3. 痙縮は出はじめていますか?ボトックスとリハビリの組み合わせは、いつ検討に値しますか?
  4. 2度目の脳卒中を防ぐ計画は?——血圧の目標値、薬、通院の間隔まで具体的に。
  5. 復職と運転再開は、いつ・どのように正式に評価しますか?気分の落ち込みの評価はされていますか?
  6. 使える支援制度は?——介護保険、身体障害者手帳など。相談員(ソーシャルワーカー)に手続きを手伝ってもらえますか?

よくある質問

脳卒中の回復は、6か月で終わりですか?
いいえ。回復がもっとも速いのは発症後3〜6か月で、大規模な研究でも、大まかな指標の上ではこの時期に最良点に達する方が多数でした。ただしそれは粗い物差しでの話です。歩行の持久力・麻痺した手の使い方・言葉などは、目標を絞った訓練を続ければ、6か月を過ぎても改善しえます。
回復の度合いは、何で決まりますか?
もっとも大きいのは発症時の重症度です。年齢、糖尿病や心臓病などの持病、認知や気分の状態、痙縮などの合併症も関わります。自分たちで働きかけられる要素もあります——実働のリハビリの量(反復)です。いずれも「そうと決まる」ものではなく確率を動かす要素で、その人でどう組み合わさるかは主治医・リハビリチームと確認するのが一般的です。
回復期リハビリテーション病棟とは何ですか?
2000年に日本の診療報酬制度の中につくられた、集中的なリハビリ専門の入院病棟です。脳卒中では一般に発症後150日(高次脳機能障害を伴う重症例では180日)を上限に、1日最大3時間のマンツーマンのリハビリを受けられます。入棟できるかどうかや詳細は、日本の主治医・病院が判断します。
手足のつっぱり(痙縮)は治療できますか?
はい、選択肢があります。ストレッチや装具、内服に加え、ボツリヌス毒素(ボトックス)注射をリハビリと組み合わせる治療が一般的で、日本では2010年から保険適用になっています。数か月ごとに繰り返すのが通常です。適応かどうかは主治医の判断になります。
車の運転や仕事には、また戻れますか?
多くの方が段階的に復帰しています。運転は「自分でできそうか」ではなく、視野・注意・反応などの正式な評価が前提で、国ごとに法的な手続きが異なります。日本では診断書の提出や、運転免許センターでの安全運転相談・適性検査といった手続きが一般的です。復職も含め、時期は主治医と相談して決めてください。
日本の支援制度(介護保険・身体障害者手帳)はどう使えますか?
脳卒中のあと、公的に二つの制度がよく使われます。介護保険は、通所・訪問リハビリや福祉用具、住宅改修などの費用を支えます。65歳以上に加え、脳血管疾患は特定疾病にあたるため40歳以上でも使えます。身体障害者手帳は、後遺症として残った障害を認定し、さらなる支援につながります。要件は、医師の診断書をもとに自治体が判断します。

日本の脳神経外科医と、直接話してみませんか

ご本人として、あるいは夜中にひとり検索を続けるご家族として、いままさにこの道の途中にいるなら——時間に追われない1時間の会話が、どこに力を入れるべきかの整理を助けてくれます。日本なら発症後の数か月をどう組み立てるのが一般的か、あなたのような状況で現実的な道のりはどう見えるか、現地のリハビリチームに持ち帰るとよい質問は何か。お相手は私自身で、その後のご相談も同じ医師が続けて担当します。

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畠中駿輔(脳神経外科医・大阪)
畠中駿輔 脳神経外科医(大阪)。術者・助手として脳神経外科手術 約1,200例、脳血管撮影・血管内治療(カテーテル)約500例。USMLE Step 1–3 合格。 医師についてもっと見る →

出典

  1. Jørgensen HS, Nakayama H, Raaschou HO, et al. Outcome and time course of recovery in stroke. Part II: Time course of recovery. The Copenhagen Stroke Study. Archives of Physical Medicine and Rehabilitation. 1995;76:406–412.
  2. 日本脳卒中学会『脳卒中治療ガイドライン2021(改訂版)』リハビリテーション・痙縮の項.
  3. Winstein CJ, et al. Guidelines for Adult Stroke Rehabilitation and Recovery(AHA/ASA). Stroke. 2016;47:e98–e169.
  4. Powers WJ, et al. Guidelines for the Early Management of Patients With Acute Ischemic Stroke(AHA/ASA)— 脳卒中の警告サイン(FAST). Stroke. 2019;50:e344–e418.
  5. 厚生労働省 診療報酬点数表「回復期リハビリテーション病棟入院料」(対象疾患・算定上限日数の規定).
  6. 厚生労働省 介護保険制度(40〜64歳の特定疾病・住宅改修費の支給)、および身体障害者福祉法に基づく身体障害者手帳.

本ページは、脳卒中後のリハビリテーションと生活が日本でおおむねどう考えられているかを、ありのままに紹介する一般的な情報です。使いどころはひとつ——おひとりの回復の計画を決めるのは、この文章ではなく、ご本人と、ご本人を診られる医師・療法士です。読んでも医師・患者の関係は生じず、実際の診療は国・施設・症例によって異なります。顔のゆがみ、腕の脱力、ろれつが回らない、突然の激しい頭痛など、突然の新しい症状が出たときは、読むのをやめて、直ちにお住まいの地域の救急に連絡してください。